食中毒を振り返る 第3回「調理場から見る食中毒予防」
調理をする上で気にしなくてはならないポイントの1つに食中毒があります。
「食中毒」といっても、種類によって特徴や発生しやすい時期、原因物質はさまざまです。身近に潜む食中毒の健康被害を避けるために、改めて食中毒について確認していきたいと思います。
- 第1回 食中毒とは、その原因、発生状況、種類について
- 第2回 食中毒を引き起こす物質が、どこから検出されたか、過去の事例を紹介
- 第3回 調理場から見る食中毒予防(大量調理施設、飲食店、家庭ごとに対策)
以上、全3回に分けてご紹介します。
今回は第3回となる、「大量調理施設、飲食店、家庭」の異なる調理場・キッチンから見る食中毒防止策を紹介していこうと思います。
基本的な食中毒予防・対策
基本となる3原則として「つけない/増やさない/やっつける」があります。
つけない:食中毒の原因となる細菌やウイルスを食べ物につけない
食材に触れる手や調理器具にウイルスが付着していると二次汚染に繋がる危険があり、入念な手洗いが大切です。また生の肉類、魚類に使用した調理器具を加熱しない食材に使いまわさないようにしましょう。
熱による殺菌工程がない為、菌が残存し食中毒に繋がることが考えられるので調理器具の使い分けが必要です。
増やさない:食中毒の原因となる細菌を増やさない
細菌は時間経過とともに増えていきます。調理中や調理後の食材を放置せず、提供・喫食までの時間に注意し、食材ごとに適した温度管理を行うことで菌の増殖を抑えられます。
調理器具などでは抗菌製品を選ぶのもおすすめです。
やっつける:食中毒の原因となる菌をやっつける
加熱が不十分だと殺菌しきれていない場合があり、とても危険です。
生乳、牛レバー、豚肉等は63℃30分もしくは中心温度75℃1分以上の加熱をするように法律で定められています。(大量調理の場合は85℃~90℃90秒以上)
また、食材に直接触れる機会の多い調理器具等は汚染されていることが考えられ、使用後の洗浄はもちろん漂白や加熱等の各種消毒が必要です。
上記3点は調理において事業所・家庭を選ばず大切なポイントです。
家庭、事業所での食中毒予防
食中毒とは身近なところでも発生するものです。
家庭での食中毒はレストランや給食、旅館等の事業所での発生とは異なり多数の感染者が出ないことで、実は食中毒が発生していても単なる体調不良として片づけられがち。但し中には重症化または死亡してしまうというケースもあるため、予防・対策は大切です。
(参考:家庭での食中毒予防|厚生労働省)
事業所での食中毒は喫食人数が家庭とは段違いのため、発生すると大規模な事故となってしまいます。業界、またはお店によって喫食までの時間や調理工程が異なるため、調理現場ごとに注意ポイントを洗い出し、細心の注意を払って衛生管理を行う必要があります。
大量調理施設、飲食店、家庭ごとの対策ポイント
手洗い設備の充実(飲食店/大量調理施設)
作業者の手は、食材はもちろんのこと、調理器具、キッチン内設備等あらゆる場所・ものに触れる為、菌やウイルスを媒介する可能性があります。
付着した食中毒の原因となる物質を移動させないよう、こまめな手洗いは非常に大切。腕、肘部分まで洗える大きさのシンクが望ましいです。
また、シンクは用途別(加熱・非加熱用食材・器具洗浄用)に分けて設置することで二次汚染を防ぐことができます。
適切な温度管理(飲食店/大量調理施設/家庭)
油の温度が下がっていることに気づかずに、従来通りの調理時間で食材を提供したことで、食中毒事故が発生したケースもあります。中心温度計を活用しましょう。
また加熱しない食材を常温で放置していたりすることで、菌が増殖します。作り置きの食品にも注意が必要です。低温環境で保存することで増殖を抑えることができるため、食材に合わせた適温で保存、管理しましょう。
使い分けの徹底、こまめな洗浄(飲食店/大量調理施設/家庭)
過去使い分けをしていれば防げた食中毒事故はいくつもあります。
まな板、包丁、ボウル、泡立て、ヘラ等食材に直接触れるものは使い分けることが大切です。
また、家庭などの限られたスペースで使い分けが難しい場合は、こまめな洗浄をすることで食中毒の対策をすることが可能です。ついついまな板などは濡れた状態で放置してしまいますが、濡れたままだとカビや雑菌が繁殖しやすくなるためキッチンペーパーで水分を拭き取りましょう。
キッチン内の消毒、掃除(飲食店/大量調理施設)
人の手が触れる機会の多いキッチン内の冷蔵庫や真空冷却器、バックヤードへの扉の取っ手や各種機械のスイッチ、水道の蛇口等は注意が必要です。
多数の人が触れ、その頻度も多いことから菌やウイルスが付着していた場合、二次汚染が発生することが考えられます。こまめに消毒、洗浄するようにしましょう。
実際、上記のポイントでATPふき取り試験を実施すると、かなりの数値が検出されるそうです。そのため非接触型水道の導入も効果的。
食洗機、各種保管庫を効果的に使う(飲食店/大量調理施設)
機器によるすすぎ、熱風保管庫、紫外線保管庫は殺菌・消毒に効果的です。但し密集させすぎると重なってしまうため、部分的に洗浄がされにくくなってしまいます。
一定の間隔を空けて配置し、洗浄、熱風、紫外線が全体に行き渡るようにしましょう。
食材の仕入れ、下処理(飲食店/家庭)
食材を仕入れる場合も注意が必要で、釣りの場合はアニサキスの処理、山菜採りでは毒草などを誤って採取しないようにしましょう。
また、野菜についた土には雑菌が含まれていることがあるため、山菜採りの他、自家菜園で収穫した野菜を調理する際は注意して洗浄する必要があります。
まとめ
調理場という枠組みで考えると学校給食、食品工場、福祉施設、飲食店、家庭とさまざまな種類があります。どの調理場でも共通しているのが「安心して美味しく食べられる食事を提供する」という目的があるということです。
そのためには衛生管理が必要不可欠。食中毒予防の3原則を遵守したうえで、注意が必要となるポイントを改めて確認してみてはいかがでしょうか。
コメント
この記事へのコメントはありません。
この記事へのトラックバックはありません。